風雅な名にふさわしい繊細な作風と大胆な人柄で、没後130年ほど経った現在でも多くの人を魅了する雲蝶の生涯と、彼の作品が見られる場所についてご紹介します。
1.石川雲蝶とは?
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写真は2011年に西福寺内に建立された「石川雲蝶 顕彰の像」です。1814年江戸・雑司が谷に生まれた雲蝶(本名・安兵衛)は、わずか20代で江戸彫石川流の彫物師として名を上げ、幕府御用勤めにまで上り詰めました。ところが天保の改革で江戸の民は倹約を迫られて不景気になり、雲蝶の仕事も激減してしまいます。
そんなある日、現・三条市の本成寺の修築のために「よい酒と鑿を修正与える」という約束と引き換えに越後に招かれます。

http://lifematome.com/?p=1387
越後の酒と三条の良質な鑿を気に入った雲蝶は亡くなるまでこの地にとどまり、大伽藍から小さな村まで1000点近くの作品を残したと伝わっています。雲蝶の生涯や人物像は謎に包まれていますが、「酒と賭博をこよなく愛した」「気が乗らなければ鑿に触れさえしないが、ひとたび気が乗れば恐ろしい勢いで鑿をふるった」など、魅力的なエピソードが多く残っています。
2.石川雲蝶の彫刻はここで見られる!
永林寺(魚沼市)
曹洞宗の名刹・永林寺は、家康の孫である松平忠直公らの香華所として葵の紋章を認められた格式高いお寺です。
この寺は雲蝶の作品を特に多く有することで有名ですが、それについて面白いエピソードが残っています。

http://kira1008.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-a1b3.html
三条・本成寺にある雲蝶の彫刻に感動した永林寺の弁成和尚が、博打に負けて借金を抱えていた雲蝶に「私と賭けをしてあなたが勝てば借金を肩代わりしてあげるが、私が勝てば本堂に彫刻を彫ってほしい」と賭けを申し入れました。賭けに勝ったのは弁成和尚で、雲蝶は13年かけて100点以上もの作品を永林寺に残したといわれています。
http://snow-country.jp/?a=contents&id=892
雲蝶の作品の中でもっとも有名な、欄間の天女像です。肉感的な肢体と繊細で優美な羽衣が美しい天女は、背中側までしっかり造り込まれているのが大きな特徴です。
こちらは、ストーリー仕立てになった欄間の一部です。
趣味の狩りに出かけようとする父親、殺生を止めようとすがりつく息子と娘、嘆き悲しむ母親の様子がリアルに表現されています。
■ 基本情報
- ・名称:針倉山永林寺
- ・住所:新潟県魚沼市根小屋1765
- ・アクセス(公共交通機関):JR「越後堀之内駅」からタクシーで約15分
- ・アクセス(車):関越道「堀之内IC」から約15分(専用駐車場あり)
- ・拝観時間: 9時-16時30分(4-10月)、9時-16時(11-3月)
- ・定休日: 年中無休(行事により拝観停止する場合あり)
- ・電話番号: 025-794-2266
- ・料金: 中学生以上300円、小学生100円
- ・公式サイトURL: http://www.eirinji.jp/
西福寺開山堂(魚沼市)

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お寺そのものは鎌倉時代からありましたが、当初は天台宗であり阿弥陀如来三尊をご本尊としていました。室町後期に曹洞宗に改宗して現在の西福寺となりましたが、曹洞宗の本尊である釈迦如来ではなく元からあった阿弥陀如来像をそのまま本尊として護持しているのが特徴です。

http://www.saifukuji-k.com/saifukuji.html
開山堂には、曹洞宗の開祖・道元禅師と歴代の住職が祀られています。この天井に施されているのが、雲蝶作の「道元禅師猛虎調伏の図」です。

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ギヤマン(ガラス)がはめ込まれた龍と虎の目は、まるで生きているように光っています。
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龍と虎のほかに、鯉・鷲・雀などさまざまな動物が彫りこまれています。長時間見上げていると首が痛くなりますが、がんばって探してみましょう!
■ 基本情報
- ・名称:西福寺開山堂
- ・住所: 新潟県魚沼市大浦174
- ・アクセス(公共交通機関): 上越新幹線/JR「浦佐駅」からタクシーで約10分、JR「小出駅」からタクシーで約15分
- ・アクセス(車):関越道「小出IC」から約7分
- ・拝観時間:9-16時
- ・定休日: なし(行事のため拝観停止する場合あり)
- ・電話番号:025-792-3032
- ・料金:中学生以上300円、小学生以下無料
- ・公式サイトURL: http://www.saifukuji-k.com/index.cgi
穴地十二大明神(南魚沼市)
穴地集落の鎮守として、古くから信仰されてきた穴地十二大明神。
躍動感あふれる社殿の彫刻は、雲蝶作のものとされています。

http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=10062
向拝(正面の階段上に張り出した部分)には龍と獅子像があります。およそ150年の間きびしい風雪にさらされ続けましたが、今でも勇ましい姿を保っています。

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欄間には、酒呑童子の大江山鬼退治像(未完成)が彫られています。なぜ未完成のまま放置されたのかはよくわかっていませんが、製作の過程が垣間見える貴重な作品といえるでしょう。
■ 基本情報
- ・名称: 穴地十二大明神
- ・住所: 新潟県南魚沼市穴地
- ・アクセス: JR上越線「浦佐駅」からタクシーで約20分、関越道「小出IC」から20分
- ・営業時間: 4月-11月上旬
- ・定休日: なし(見学自由だが、冬季は雪のため立入不可な場合あり)
- ・電話番号: 025-777-3054(大和観光協会)
- ・料金: なし
- ・参考サイトURL: http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=10062
龍谷寺(南魚沼市)
http://snow-country.jp/?a=contents&id=1182
もともとは天台宗のお寺で八海山を修行道場とすべくこの地に創建されましたが、後に現在の曹洞宗に改宗しました。本堂横の慈雲閣開運堂は、グプタ朝の様式を取り入れた独特の造りになっています。

http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=6143
本堂にある透かし彫りの欄間は雲蝶が手がけたものです。こちらにはいきいきとした獏(ばく)・麒麟が彫られています。

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同じく本堂の欄間です。上の写真よりはあっさりした構図ですが、繊細でどこかしらエキゾチックな葡萄が美しいですね。
■ 基本情報
- ・名称:龍谷寺
- ・住所: 新潟県南魚沼市大崎3455
- ・アクセス: 上越新幹線「浦佐駅」からバスで15分、関越道「大和IC」から10分
- ・拝観時間: 9-16時
- ・定休日: 無休(行事により拝観停止する場合あり)
- ・電話番号:025-779-2020
- ・拝観料:200円
- ・参考サイトURL: http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=6143
秋葉三尺坊大権現(秋葉神社奥の院、長岡市)
秋葉公園内に位置する秋葉神社は、上杉謙信が常安寺の守護神として楡原の蔵王堂からこの地に移したのが始まりといわれています。
現在でも火伏せの神として信仰を集めており、毎年7月に「秋葉の火祭り」が開催されます。

http://blog.goo.ne.jp/ttmida/e/3c0049cc4e6992dab8b1c78b739210e3
本殿(奥の院)には、雲蝶と彼の先輩でありライバルである彫刻師・小林源太郎の共作の透かし彫りが残されています。写真は、カラス天狗が酒盛りをするユーモラスな場面です。

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こちらは、牛若丸と天狗たちが力比べをしている場面です。彫刻の一部が未完成になっていますが、雲蝶と源太郎が喧嘩別れしたためだとも、彼らがあちこちに出向いて作品を彫るのに忙しかったためだとも言われています。
■ 基本情報
- ・名称: 秋葉三尺坊大権現(秋葉神社奥の院)
- ・住所: 新潟県長岡市谷内2
- ・アクセス:上越新幹線・JR「長岡駅」からバスで1時間、関越道「長岡IC」もしくは北陸道「中之島見附IC」からそれぞれ30分
- ・拝観時間: 見学自由
- ・電話番号: 0258-51-1195(栃尾観光協会)
- ・料金:無料
- ・参考サイトURL: http://www.niigata-kankou.or.jp/shiru/rekishi/jinbutsu/uncho/akiba.html
貴渡神社(長岡市)

http://www.niigata-kankou.or.jp/shiru/rekishi/jinbutsu/uncho/takanori.html
貴渡(たかのり)神社は、養蚕と縞紬を広め地場産業の発展に貢献した庄屋・植松貴渡を祀るために集落の鎮守・巣守神社の境内に創建されました。小さな社殿が雲蝶の作品で埋め尽くされており、養蚕や織物にいそしむ女性の姿などがいきいきと表現されています。

http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=5779
蚕を飼育している場面です。後ろの棚に並べられた盆(浅い桶?)の中に、おカイコさんたちがいます。左下に「石川安兵衛(雲蝶の本名)」と刻まれていますね。
■ 基本情報
- ・名称:貴渡神社(たかのりじんじゃ)
- ・住所:新潟県長岡市栃堀 (巣守神社境内)
- ・アクセス:上越新幹線・JR「長岡駅」からバス約80分、関越道「長岡IC」・北陸道「中之島見附IC」からそれぞれ約40分
- ・拝観時間:見学自由
- ・電話番号: 0258-51-1195(栃尾観光協会)
- ・料金: 無料
- ・参考サイトURL: http://www.niigata-kankou.or.jp/shiru/rekishi/jinbutsu/uncho/takanori.html
石動神社(いするぎじんじゃ、三条市)

http://sanjo-kankou.jp/?page_id=77
石動神社(いするぎじんじゃ)は、古くから「吉野屋の大権現」として地元民に信仰されてきました。明治元年に火事で焼けた拝殿の再建時に、地元の庄屋の依頼を受けた雲蝶が彫刻を手がけました。
向拝部分には、迫力満点の龍が彫られています。
もともとこの龍は頭を右に向けた姿でしたが、夜な夜な抜け出して住民を騒がせたために雲蝶が頭を左向きに挿げ替えて龍を鎮めたという言い伝えが残っています。

http://www.niigata-kankou.or.jp/sys/data?page-id=5726

http://www.toretabi.jp/travel/teiban_vol14/01.html
管理人さんがいれば、拝殿内部を見せてもらうことができます。拝殿内部の欄間には源頼政の鵺退治・源頼光らの大蜘蛛退治などの名場面が、脇障子には神功皇后と竹内宿禰・加藤清正と高麗人などの物語の場面が彫られています。
■ 基本情報
- ・名称: 石動神社(いするぎじんじゃ)
- ・住所: 新潟県三条市吉野屋甲3885
- ・アクセス: 上越新幹線・JR「燕三条駅」よりタクシー約30分、北陸道「三条燕IC」より国道8号経由で約30分
- ・拝観時間:見学自由 (拝殿内部は管理人がいる場合のみ)
- ・電話番号: 0256-34-5514(三条市営業戦略室観光係)
- ・料金: 無料
- ・参考サイトURL: http://www.niigata-kankou.or.jp/shiru/rekishi/jinbutsu/uncho/isurugi.html
本成寺(三条市)

http://www.kenoh.com/2011/02/03setsubun.html
最後にご紹介するのは、雲蝶ファンならぜひとも訪れておきたい本成寺です。1297年に日蓮上人が創建した古刹・本成寺は、毎年2/3に「節分鬼おどり」が行われることで有名です。

http://www.city.sanjo.niigata.jp/eigyo/page00160.html
この寝牛像は、かつて欄間に組み込まれていたものです。(現在は伽藍内の塔頭・要往院に受け継がれています)三条の金物商・内山又蔵が「よい酒と鑿を与える」という約束で本成寺の彫刻を依頼したのがきっかけで、雲蝶は越後に来ることになりました。
また、後に彼のよき友となる永林寺の弁成和尚との出会いも、本成寺の彫刻がきっかけとなりました。
雲蝶の人生の分岐点は、つねに本成寺にあったのですね。
こちらの亀は、伽藍内の塔頭・静明院に受け継がれています。いかにも爬虫類らしい、皮膚の質感が見事ですね。
数え切れない傑作をのこし、破天荒な人生を送った雲蝶は、本成寺の境内にあるお墓で静かに眠りについています。
■基本情報
- ・名称:法華宗総本山本成寺
- ・住所:新潟県三条市西本成寺1-1-20
- ・アクセス: JR「三条駅」徒歩15分、北陸道「三条燕IC」より15分
- ・拝観時間:9-16時
- ・定休日: なし(住職不在時・行事の際は一部拝観できない場合あり)
- ・電話番号:0256-32-0008
- ・料金(宝物殿):300円
- ・参考サイトURL:http://www.niigata-kankou.or.jp/shiru/rekishi/jinbutsu/uncho/honjoji.html