トリップアドバイザー
室蘭やきとりをご存知でしょうか?ここは北海道にある胆振総合振興局所在で、その名をアイヌ語の「モ・ルエラニ」(小さな・下り路)に由来しています。明治期には「モルラン」と呼ばれていたんですって。さて冒頭の料理ですが、名前だけ聞いたら、何の変哲もない焼き鳥のように思ってしまうかもしれません。しかし、これが実は鶏肉を使ってすらいないのです!今回の記事ではその謎とおいしく食べるための情報を一挙お届けします!
北海道室蘭市の室蘭焼き鳥は、埼玉県東松山市、愛媛県今治市と共に、3つの街それぞれに独自のスタイルを持っている、日本三大やきとりの街として知られています。豚肉、玉ねぎ、洋がらしという室蘭独自のやきとりを是非ご賞味あれ!
室蘭やきとりとは?
http://blogs.yahoo.co.jp/abcsyu123/35200177.html
室蘭やきとりは北海道室蘭の地方で愛されている郷土料理です。甘みの強いたれでいただくのが通常で、塩に変更してくれるお店も多く存在します。お皿には練りからし、洋がらしが塗られており、これをつけて食べます。室蘭市内においては、現在も50軒以上の「室蘭やきとり」のお店があるので、室蘭やきとり巡りもできます。室蘭だけでなく、伊達市や札幌市、登別市といった地域にもこのやきとりの専門店が出ています。もっとも特徴的なのは、矢張りその具材にあります。
やきとりだけど「鶏」じゃない!?
やきとりという名前ですから多くの人は鶏料理であると予想するのではないでしょうか。ですがこれが最大の特徴、なんと室蘭やきとりは鶏を使っていないんです!
使うお肉は豚肉、室蘭原産の豚肉とたまねぎを串焼きにした料理なのですが、地元でもこれらは「やきとん」とは表しません。食べ方は「洋からし」をつけていただきます。
見かけはお肉のところが豚肉になっているだけで、いわゆる焼き鳥と変わりません。豚精肉と玉ねぎが竹串で刺されています。お肉としては特に肩ロースを使用することが多いようです。もちろん、他の部位も提供してくれるお店も多いですね。サガリや豚とろも美味しいですよ。室蘭やきとりのお店で「ねぎま」をオーダーすると、豚肉であることが多いです。
高級食材だった鶏肉
Dakiny
今でこそ鶏肉は豚肉よりも安く買い求めらますが、室蘭やきとりが始まったころには、北海道では鶏肉は高級で手に入りにくい食材でした。ブロイラーで鶏が大量飼育されるようになってから、鶏肉の値段が下がることでやきとりに使えるようになりました。その頃のやきとりは、かすみ網で捕獲した鳥や、増産体制となっていことから、安く手に入れることが出来た豚モツを、やきとりとして提供されていました。かすみ網で捕獲した鳥を食材に出来るのは、季節が限られていたこともあり、豚モツが室蘭ではやきとりとして定着しました。
もともと昭和の初めごろから、室蘭における食糧増産を図る為に、農家では積極的に豚が飼育されていたという背景があります。お肉を使ったメニューに、積極的に豚肉を使うのは当然と言えば当然だったのかもしれませんね。戦争中は、軍靴の材料に豚皮が使われていた為、さらに養豚が勧められていました。その伝統が現在にも残っているのですね。
ホントの焼き鳥だった
今でもまれにスズメやウズラなどを、やきとりとして食べることが出来るお店がありますが、かすみ網猟が禁止されるまでは、正しく焼き鳥を食べられるチャンスは数多くあり、室蘭でもアオジ、メジロ、ツグミなどの鳥を焼き鳥にして出していたそうです。
室蘭では、鶏肉ではなくて焼き鳥が出されていましたが、季節に変わりなく手頃な値段で楽しめる、豚モツの串焼きが主となりました。戦後になって鶏肉が安くなり、他の地方ではやきとりの食材として使われるようになっても、室蘭では伝統の豚を使ったやきとりが愛され続けました。
このあたりにおいては、鶏肉のことは「鶏精(とりせい)」と呼んでいたそうです。豚肉は豚精(ぶたせい)ですね。お肉の間にはタマネギを入れる、というのは共通しています。また、室蘭のお店に行くとまぎらわしくないようにと、メニューに表記してくれている所も多いですね。一般的な焼き鳥も食べられないわけではありません。
なぜ洋からしとタマネギ
やきとりに洋からしとタマネギの組み合わせが、室蘭のやきとりの特長ともなっていますが、洋からしをやきとりに付けるようになったルーツは諸説あるということです。タマネギについては、北海道はタマネギの産地であり、長ネギよりも手に入り易く、豚肉との相性も良いことによるとされています。
おでんに付けた洋からしが、豚肉と相性が良かったという説があり、室蘭以外の場所でも鶏肉を使ったやきとりに洋からしを付けるお店もあります。タマネギも洋からしと同様に、室蘭以外の地域でもやきとりに使われており、タマネギの甘さがやきとりの味と食感を一層引き立てる役割をしています。
やきとりには、秘伝のタレをそれぞれのお店で使っているところが多いですが、この洋がらしとの相性も重要になってきますね。ぴりりと辛いからしとタレの相性が良いと、やきとりの美味しさも倍増します。この味に慣れてくると、他の地域で焼き鳥をオーダーした時にちょっと物足りないと感じる人もいるとか。それだけ絶妙な組み合わせということでしょう。
北海道随一のやきとりの町
※室蘭市町並み
室蘭のやきとり専門店の数は54店あり、人口1万人あたりの店舗数が6.4店となっていて、日本で有数のやきとりの町となっています。道内のやきとり店舗数を比べて見ると、人口1万人あたりの店舗数が、室蘭に次いで多いのが、美唄の4.1店、士別の3.8店となっています。全道平均が2.3店ということから、室蘭のやきとり店の多さは群を抜いていて、北海道随一のやきとりの町、室蘭ではやきとりが文化となっていると言えましょう。
現在では室蘭の「やきとり」は、全国的にも知られるようになっています。本場の味を食べたいということで、室蘭を訪れる人も多くいます。ちょっとした居酒屋に入っても「やきとり」を提供してくれるお店も多いので、実感としてはやきとりのお店はかなり多く感じますね。室蘭の人にしてみると、当たり前の味であり、伝統でもあります。
室蘭やきとりの起源は?
室蘭でやきとりと言えば豚肉、こんな状態がなぜ生まれたのでしょうか?簡単に歴史をご紹介します!初めてこの室蘭やきとりを提供したお店はどこだったのか?そして「室蘭やきとり」という呼ばれ方の誕生は?どんな背景があって、この豚肉を使った「やきとり」が定着したのか、などは歴史を紐解くと少しずつ見えてきます。室蘭という地域を知るのにも、重要な要素かもしれません。室蘭に行く前にプチ情報として知っておいても良いですね。
室蘭やきとりの歴史
①雀のやきとり「鳥よし」昭和初期、室蘭では食糧の増産のために豚の家畜業を始めるようになったと言います。当時から豚の串焼き料理というのは存在していたのですが、その中で焼き鳥の販売を目指し雀肉を利用して焼き鳥を販売しだした「鳥よし」というお店が開かれたそうです。
「鳥よし」は、昭和12年より営業しています。帯広にも「鳥よし」というお店があり、そこに修行に出ていた当時の店主が、室蘭で焼き鳥を始めたといいます。最初は屋台からのスタートでした。そのころから豚の精肉とモツを使っており、特にモツの方が安かったのでそちらのニーズが強かったそうです。精肉が普通に食べられるようになったのは比較的近年のことだそうです。
②室蘭やきとり誕生
その後も継続して豚の串焼きが販売されており、そこで焼き鳥と同時に提供されていたということもあり、見た目も似ていることから「室蘭やきとり」として存在するようになったようです。
定着したのは「豚肉・玉ねぎ・洋がらし」スタイル。産地であり入手しやすいという北海道産玉ねぎをしっかり地産地消できるのが良いですね。洋がらしはおでんのものから来たのか、トンカツのものから来たのかハッキリはしません。ニーズを出したお客さんの発想です。もともとは長ねぎも使っていたそうですが、高価なわりに使いどころが少ないので、玉葱を積極的に使うようになったそうです。
③郷土の味として定着
その後第二次世界大戦などで豚皮の靴を量産するために豚肉消費の奨励がおこなわれました。そうした過去のいきさつも含めてさらに定着していったようです。
昭和12年の日中戦争時代においては、食糧難に陥った際、食料を増産する為に農家で豚が飼われるようになっていたという基盤もあります。第二次世界大戦中は、軍靴用の豚の皮および肉以外は食べても良いという許可があったので、それならということで豚の内臓(モツ)を提供するようになったという背景もあります。安くて美味しいグルメは、当時の食糧事情から言えば貴重だったでしょう。
お味の感想はいかに?
室蘭やきとりは室蘭の郷土料理ではありますが、室蘭だけでなくても提供されているお店はいくつか存在します。室蘭やきとりのこだわり
郷土料理というだけあって豚肉とたまねぎの組み合わせ、甘さの強いたれでの味付け、洋からしでピリッと味を占めるというのはどこもこだわっているようです。たれへのこだわりは通常の焼き鳥も室蘭焼き鳥も一緒、まずはたれで食べる!という方も多いようですね。
クチコミもコメント良好
室蘭焼き鳥!豚肉だけど焼き鳥!辛子つけると特にうまい! pic.twitter.com/lBQbYJ3UAL
— Yamada Wataru (@YM_WT) 2016年5月1日
室蘭焼き鳥いいいいい〜〜