Kentaro Ohno
2010年、「平成の大修理」を終えて再びその姿を現した唐招提寺金堂。国宝でもあり世界文化遺産でもある唐招提寺は、鑑真上人によって創建された律宗の総本山です。日本のお寺であってもどこか異国情緒が漂う唐招提寺。境内には見所が一杯です。歴史が好きな人なら、いえそうでない人でも長い年月を経て自分の目の前にたつ建物や仏像に驚きを感じずにはいられないと思います。そんなこのお寺の見所をまとめてみました。 1.鑑真とは?
http://blog.livedoor.jp/coco612/archives/3738687.html
鑑真(688~763) は、奈良時代、唐から日本に来て仏教を広めた高僧です。 渡航は難しく、5回の失敗を経験しました。その間、視力を失いながらも日本へ渡ることを諦めることなく、753年にようやく渡航に成功。当時既に66歳でした。
苦難を乗り越えて仏教を広めた人生は、『天平の甍』(井上靖著)の小説で知られています。日本へ来てすぐ東大寺に入りましたが、後に『唐招提寺』(とうしょうだいじ)を開いて、新しい戒律を広めました。
唐招提寺にある『鑑真和上像』は、天平時代の彫刻の最高傑作です。
2.唐招提寺ってこんなところ
http://field-walk.com/article/2012824-0
唐招提寺は、南都六宗の一つ、律宗の総本山。1998年、ユネスコより世界遺産に登録されました。 境内には、金堂・講堂・宝蔵・鼓桜といった伽藍(ガラン)が立ち並んでいますが、いずれも国宝です。
http://www.d1.dion.ne.jp/~s_minaga/sos_tosyodaiji1.htm
3.唐招提寺の見どころ
(1) 金堂
唐招提寺金堂は、この寺の本堂であり、国内に現存する唯一の天平時代の金堂建築物です。南門を入ってすぐに現れるこの建物は、屋根の曲線、力強い円柱など美しく、1200年もの間変わらぬ姿を保っています。阪神淡路大震災の影響で改修工事が施されましたが、屋根を支える邪気など天平時代のものがそのまま使用されています。
エンタシスの柱は、等間隔だと思いがちですが、中央が広く、端に行くほど狭くなっています。
http://www.panoramio.com/photo/73411821
(2) 千手観音立像
金堂には、全部で9体の仏像が安置されていますが、その中でもひと際目を引くのが、千手観音立像(せんじゅかんのんりゅうぞう)・盧遮那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)・薬師如来立像(やくしにょらいりゅうぞう)の3体です。千手観音立像は、その名の通り千本の腕をもつ迫力あるお姿で見る者を釘付けにします。42本の手で”千手=たくさんの手”という意味をあらわす像が多い中で、ここ唐招提寺と葛井寺(大阪)は本当に千本の手があります。眉間にある第三の目”手のひらの目”にも注目です。
(3) 年中行事 「うちわまき」
毎年5月に行われるうちわまきは、唐招提寺中興の祖・覚盛上人の命日に、尼僧たちが扇を作って上人の仏前に供えたという言い伝えにちなみます。このうちわは、魔除け、田畑の虫除け、安産のお守りとして重宝され、人々は撒かれるうちわを争って求めます。うちわまきの前には、講堂で行われる法要と並行して舞楽奉納があり、厳かな舞と音楽が響きます。
(4) 鑑真大和上坐像・御影堂障壁画特別開扉
http://blog.goo.ne.jp/mrslim2/e/70dda19b1722182ad6526229f361b219
唐招提寺を開いた鑑真和上の姿を現在に伝えるこの像は、天平文化を伝える、彫刻の最高芸術品と言われています。普段は御影堂に安置されていますが、例年、ご命日の6月6日をはさんだ3日間だけ、特別に扉が開かれお姿を拝見することができます。 (5) 境内の草木・草花
「鑑真大和上ゆかりの瓊花(けいか)」 http://butszo.jp/2014/04/2378/
4月から5月にかけて見事な花を見せる”瓊花(けいか)”は、鑑真大和上の故郷の江蘇省揚州市の名花で、日本ではめずらしい花です。 「蓮の花」
http://blog.livedoor.jp/drb7778680/archives/51229815.html
戒壇前の蓮池など、奈良の中でも蓮の名所として知られます。 見頃は、6月下旬から8月上旬です。 「鑑真大和上の御廟に続くコケ」
http://tabiq-nara.cocolog-nifty.com/blog/cat20872620/index.html
鑑真大和上のお墓である御廟に続くコケの、緑の絨毯が見事です。 土塀をくぐると景色が一変して、天平の昔に思いを馳せることができますね。
■ 基本情報
- ・名称: 唐招提寺
- ・住所: 奈良五条町13-46
- ・アクセス: 奈良交通六条山行バス17分「唐招提寺」下車すぐ
- ・拝観時間: 8:30~17:00(受付は16:30まで)
- ・電話番号: 0742-33-7900
- ・料金: 大人・大学生600円 / 高校生・中学生400円 / 小学生200円
- 【御影堂】大人・大学生500円/高校生・中学生300円/小学生200円
- 【新宝蔵】大人・大学生・高校生・中学生100円/小学生50円
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/
4. 盧舎那仏坐像(るしゃなぶつ ざぞう)本尊
http://blog.goo.ne.jp/chx15430/e/3c239d28fbc87e9088ddc7f9a5b6cf76
金堂(こんどう)の中央に安置されている本尊で国宝に指定されています。脱活乾漆造(だっかつかんしつぞう)という、唐から伝わり奈良時代にさかんに用いられた技法を使って作られています。高さが3mを超える巨像ですが、雄大さとやさしさを併せ持った唐招提寺の本尊に相応しい像です。
脱活乾漆造というのは、麻布を漆で張り重ねて原型を作り、その上に漆と木粉を練り合わせたもので細かい部分を作っていく技法です。木造より時間もお金も掛かるため、平安時代以降は廃れてしまったとか。まさに奈良時代を象徴する作り方なのですね。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・盧舎那仏坐像(るしゃなぶつ ざぞう)・本尊
- ・場所: 金堂中央
- ・制作年代:8世紀(奈良時代)
- ・技法: 脱活乾漆造(だっかつかんしつぞう)
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_kondoh.html
(1)薬師如来立像(やくしにょらいぞう りゅうぞう)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E9%9A%86%E5%AF%BA%E9%87%91%E5%A0%82%E8%9…
本尊の盧舎那仏坐像の向かって右手に安置されている像で、高さが3.36mあります。本尊や千手観音より少し遅い平安時代初期の完成だと言われています。伏目がちで重厚な印象があるその姿は、またの名を医王如来と言われる医薬の仏に相応しい表情です。
昭和47年(1972)に修理された時、左手の掌から作られた当時のお金が3枚見つかり、その年代から平安時代の初めの完成だと明らかにされているそうです。時間を越えて発見された古銭。だから歴史は面白いのですね。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・薬師如来立像(やくしにょらいぞう りゅうぞう)
- ・場所: 金堂・盧舎那仏坐像の向かって右手
- ・制作年度:平安時代初期・9世紀
- ・技法: 木心乾漆造
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_kondoh.html
(2)四天王立像(してんのう りゅうぞう)
http://blogs.yahoo.co.jp/asaka0704/66755933.html
仏教世界の護法神である四天王「持国天立像(じこくてん)」「増長天(ぞうちょうてん)」「広目天(こうもくてん)」「多門天(たもんてん)」の立像です。金堂の本尊を安置する「須弥壇(しゅみだん)」の四隅に安置される像です。いずれも奈良時代に作られ、国宝に指定されています。
高さは1.85~1.88mある立像ですが、それぞれの像の表情がとても興味深いです。大陸風な作風のこの像は、鑑真がもたらした当時の最新の技術が大きく影響しているのでしょうね。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・四天王立像(してんのう りゅうぞう)
- ・場所: 金堂・須御壇の四隅
- ・制作年度: 8世紀・奈良時代
- ・技法: 木造・乾漆併用 彩色
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_kondoh.html
(3)梵天・帝釈天立像(ぼんてん・たいしゃくてん りゅうぞう)
http://bittercup.blog.fc2.com/blog-date-20101122.html
古代インドの護法神である梵天と帝釈天は一対で作られることが多い仏像です。四天王像と同じ時期に同じ工房で作られたと考えられています。本尊に向かって右に立つのが「梵天」、左に立つのが「帝釈天」です。どちらも鎧の上に裳(も)と沓(くつ)とつけ、梵天はさらにその上に袈裟をつけています。
どちらの像も、殆どが針葉樹の一材から掘り出されているのだそうです。特に梵天像の着衣は、乾漆の盛上げだけで作られているとか。当時の技術にも目を見張ります。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・梵天・帝釈天立像(ぼんてん・たいしゃくてん りゅうぞう)
- ・場所:金堂・盧舎那仏坐像の左右
- ・制作年代:8世紀・奈良時代
- ・技法: 木造・乾漆併用 彩色
- ・関連サイトURL: http://www.tbs.co.jp/p-guide/daiji/about/03_03.html
(4)講堂(こうどう)
http://blogs.yahoo.co.jp/kirishima_no_bebu/38416399.html
金堂の後ろに位置する場所にあるのが講堂です。この建物は平城宮の東朝集殿(ひがしちょうしゅうでん)を移築して寺院用に改造したものです。現在私たちが目にする姿は、鎌倉時代に改造した影響が大きいといわれています。平城京の遺構で現在も残っているたった一つの建物でもあります。
平城京から移築された建物のため、他の伽藍とは意匠が違うのだそうです。その辺りも覚えて拝観するとますます興味深くなるでしょう。天平の息吹を感じることのできる貴重な建物です。
中には講堂の本尊である「弥勒菩薩坐像(重要文化財・鎌倉時代)」や同じく重要文化財で奈良時代に造られた「持国天像」「増長天立像」など沢山の仏像が安置されています。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・講堂
- ・場所: 金堂の後方
- ・建築年代等:平城京からの移築。外観や平屋・入母屋造
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_koudoh.html
(5)鼓楼(ころう)
http://blog.goo.ne.jp/escassy1/e/c61e5ec99ed52a2683a914a5fa9cfc01
金堂と講堂の間の東側に立つ2階建ての建物で、鎌倉時代の仁治元年(1240)に建てられました。「鼓楼」と呼ばれていますが、鑑真和尚が持ってきた「仏舎利」を安置している為、現在は「舎利殿(しゃりでん)」とも呼ばれています。国宝に指定されている建物です。
1階2階部分共に扉と連子窓(連子窓)で作られた建物が興味深いです。楼の中には仏舎利を収めた金亀舎利塔(きんきしゃりとう)が安置されています。他にも国宝の「白瑠璃舎利壺(はくるりしゃりこ)」なども見ものです。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・鼓楼(ころう)
- ・場所:金堂と講堂の中間の東側
- ・建築年代:仁治元年(1240)鎌倉時代
- ・建築様式等: 楼造・入母屋造・本瓦葺
- ・公年式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_koroh.html
(6)御影堂(みえいどう)
http://sankei-nara-iga.jp/news/archives/3358
唐招提寺の境内の東側の奥に位置する江戸時代の建物です。元は興福寺の別棟だった一乗院宸殿の遺構だった建物が、明治以降に県庁や裁判所の庁舎として使われた後、昭和39年(1964)に移築復元されたものです。国宝の「鑑真大和尚坐像」はここに奉安されています。
現在この建物は大修理に入っていますので、国宝「鑑真和尚坐像」は新宝蔵に遷座されています。坐像は6月5日~7日に新宝蔵で開扉されますので、坐像を拝観したい方はそちらへどうぞ。
東山魁夷画伯画(昭和46~57年)の「鑑真和上坐像厨子扉絵」「ふすま絵」「障壁画」が収められているのもここです。大修理が終わったら是非拝観したいですね。
■ 基本情報
- ・名称: 重要文化財・御影堂(みえいどう)
- ・場所: 境内東奥
- ・建築年代:江戸時代・ 興福寺の別当一乗院宸殿の遺構を移転復元
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_mieidoh.html
(7)経蔵・宝蔵(きょうぞう・ほうぞう)
http://blogs.yahoo.co.jp/kirishima_no_bebu/38416399.html
礼堂の東に並んで立つ校倉で、どちらも奈良時代(8世紀)の校倉・寄棟造・本瓦葺の建物で国宝です。経蔵は南側の小さな方の蔵で、唐招提寺建立前の新田部親王邸の米倉を改造したものといわれ、境内では最も古くかつ日本最古の校倉です。
宝蔵はその隣にある倉で、唐招提寺が建立された際に作られたと言われています。経蔵より一回り大きな建物です。建立前・直後の建築物が残っているのは感慨深いですね。
■ 基本情報
- ・名称: 国宝・経蔵(きょうぞう) 宝蔵(ほうぞう)
- ・場所:礼堂東
- ・建築年代: ともに8世紀・奈良時代
- ・建築様式: 校倉・寄棟造・本瓦葺
- ・公式サイトURL: 経蔵 http://www.toshodaiji.jp/about_kyouzoh.html 、宝蔵 http://www.toshodaiji.jp/about_houzoh.html
(8)開山堂(かいざんどう)
http://blog.livedoor.jp/drb_extra2/archives/1389660.html
元禄時代に徳川家歴代の御霊殿として建立された建物で、明治14年(1881)鑑真大和上坐像を安置する為にこの場所に移築されました。四方を塀に囲われ一段高い位置にある建物です。像が御影堂へ移された後は覚盛上人・聖武天皇・徳川家康を安置した本願殿として参拝されていました。
国宝の「鑑真大和上坐像」を拝観できるのは一年に限られた期間だけですが、平成25年(2013)に「御身代わり像(おもがわりぞう)」が造られこの堂に安置されました。
安置されている御身代わり像は、本物と同じ当時の手法を忠実に踏襲してつくられています。ガラス越にこの御身代わり像を通年見ることができます。
■ 基本情報
- ・名称: 開山堂(かいざんどう)
- ・場所: 礼堂奥
- ・建築年代:元禄期・江戸時代
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/about_kaizandoh.html
(9)ご朱印・ご朱印帳
http://blog.goo.ne.jp/neko32_06/c/fa93a5fd0ed465388abd5856ce7ff6af
唐招提寺を訪れたのなら「ご朱印」を頂くのはいかがでしょうか。勿論ご朱印はスタンプラリーではありませんが、参拝をした証として一番記念になるのもご朱印だと思います。唐招提寺のご朱印は、境内にある売店で頂くことができます。参拝する前にご朱印帳を預けて後で受け取ることもできます。
唐招提寺の売店には千手観音光背が表紙になったオリジナルのご朱印状も販売されています。ここでご朱印帳を購入してご朱印を頂くのもいいと思います。唐招提寺のご朱印には本尊の盧遮那仏のものと鑑真和上那仏のものがあります。
■ 基本情報
- ・名称: 唐招提寺ご朱印帳
- ・販売所:境内売店
- ・料金: 1,200円
- ・公式サイトURL: http://www.toshodaiji.jp/goods.html
以上、奈良、唐招提寺の見どころをご紹介いたしました。以前、「唐招提寺は朝静かな時にいくといいよ」と昔、地元に住むある人に聞いたことがあります。拝観時間は8:30からなのでその時間に合わせていくのもいいと思います。
静かな境内をあるいて拝観していると、鑑真和上が困難の末にたどり着いた天平の昔の日本を体験できるかもしれませんね。
国宝や重要文化財が多く収蔵される奈良、唐招提寺。誰もいない静かな境内はその神秘性が一層強調されるかのようです。考え事をしたい時や一人になりたい時にもおすすめの場所です。
一方で、瓊花(けいか)や蓮の花など、四季折々の花々の美しさを愛でる際は、大切な人と時間を共有してもいいかもしれません。家族や友人、恋人、といった自分以外の人々とのいい思い出になる事でしょう。何度も訪れて、色んな楽しみ方を見つけてみてください^^